📌 この記事でわかること
- 高1・高2のやる気のなさが「異常ではない」と言える理由と、それでも今動き出すべき根拠
- やる気が出ない子どもの4タイプと、タイプ別のコーチング式声かけの具体例(NG→OK対比)
- 保護者が今週から実践できる、子どもを”自分ごと”にさせる3ステップの関わり方
「うちの子だけが勉強しないわけではない」——高1・高2の受験意識の薄さは正常反応です
「高1になったのに、受験のことを全然考えていないみたいで……」
「高2も後半なのに、部活のことしか頭にないようで不安で……」
こうした声を、保護者の方から本当によくいただきます。
でも、少し安心してください。高1・高2が受験に対してピンときていないのは、発達的に見てごく自然なことです。
大学受験という出来事は、高1の子どもにとって「2年〜3年後の話」です。人間の脳は、遠い未来のことを切実な問題として認識するのが苦手にできています。受験が「他人事」に感じられるのは、意志の弱さでも怠慢でもなく、時間的距離の問題にすぎません。
ただし、ここが重要なのですが——
「正常反応だから放っておいていい」とはなりません。
高1・高2という時期に受験意識の「種まき」ができた子と、高3になってから慌てて動き出した子では、スタート時点での差が非常に大きくなります。私がこれまで100名以上の生徒を見てきた経験から言うと、難関大学(MARCHや国公立)に合格した生徒のほとんどが、高2の終わりまでには「なんとなく受験を自分ごとにできていた」子たちでした。
では、保護者はどうすればいいのか。「勉強しなさい」と言い続けるのか。塾に放り込めばいいのか。——そのどちらでもありません。この記事ではそのことをじっくりお伝えしていきます。
高3から始めた子との差は、データよりも「思考の深さ」に出る
「高3から本気になれば間に合う」という話を聞いたことがある保護者の方も多いでしょう。確かに高3から始めて難関大に合格した生徒も存在します。しかし、私が長年の指導を通じて感じてきたのは、高1・高2で受験意識を持てた子と高3スタートの子の差は、学習時間の差よりも「思考の質の差」として現れるという点です。
高1・高2からゆっくりと受験を自分ごとにしてきた子は、「なぜ大学に行くのか」「何を学びたいのか」という問いに対して、自分なりの言葉を持っています。その「why」があるから、苦しい高3の夏もなんとか乗り越えられる。
逆に、高3になって親や塾に急かされて渋々勉強を始めた子は、「やらされ感」が拭えず、メンタルが折れやすい。
「高2の夏ごろから、週に1回だけ息子と将来の話をするようにしました。最初は全然乗り気じゃなかったのですが、半年ほど続けるうちに自分から『経営学部に行きたいかもしれない』と言い出して。高3になってから急に本気スイッチが入って、最終的に明治大学に合格してくれました。あの頃の何気ない会話が土台になったんだと思います。」
― 元生徒(明治大学経営学部合格)の保護者より
焦らせる必要はありません。でも、何もしないのとは違う。高1・高2の今だからこそできる、保護者の「静かな関わり方」があります。
まず知っておきたい「やる気が出ない」4タイプの見極め方
一口に「やる気がない」といっても、その理由はお子さんによって異なります。原因が違えば、声かけの方法も変わります。まずはお子さんがどのタイプに近いか、確認してみてください。
タイプ①:ゴールが遠すぎて実感がわかない「距離感型」
「大学受験ってまだ先の話でしょ」という言葉が口癖のタイプ。勉強が嫌いなわけではなく、受験という出来事がリアルに感じられていない。高1・高2に最も多い。
タイプ②:志望校・進路がまだ決まっていない「方向感覚なし型」
「どこに行けばいいかわからないから、何をすればいいかもわからない」という状態。目標がないから勉強のエンジンがかからない。このタイプには「とにかく勉強しろ」は逆効果。
タイプ③:部活・友人関係・趣味が優先の「今が楽しい型」
受験の重要性は頭でわかっているが、目の前の楽しさや仲間との時間の方が圧倒的にリアル。悪い子ではなく、高校生として健全な姿でもある。ただし放置すると気づくのが遅れる。
タイプ④:「やってもどうせ無理」という無力感型
過去のテスト失敗・周囲との比較などで自信を失っているタイプ。やる気がないように見えるが、実は深く傷ついていることが多い。このタイプへの「比較・脅し型」の声かけは厳禁。
💡 ポイント
同じ「やる気がない」でも、原因は全く違います。保護者が最初にすべきことは「勉強させること」ではなく、「わが子がどのタイプか見極めること」です。タイプを誤ると、どんなに正しい声かけをしても響きません。
タイプ別×学年別「コーチング式声かけ」実践ガイド
コーチング式の声かけとは、答えを与えるのではなく、子ども自身が自分の中から答えを引き出せるような「問い」を投げかける関わり方です。「勉強しなさい」は指示であり、コーチングではありません。
タイプ①「距離感型」への声かけ
NG声かけ例:
「もう高1なんだから、そろそろ受験を意識しなさい」
「今サボったら高3で後悔するよ」
OK声かけ例(高1向け):
「ちょっと聞いてみたいんだけど、大学って何のために行くと思う?」
「○○ちゃん(同年代の知人)が行きたいって言ってた大学、どんなところだと思う?」
OK声かけ例(高2向け):
「大学のオープンキャンパス、来年の春ごろ一緒に行ってみない?行くだけでいいよ」
「今の時点でなんとなく気になる学部ってある?なんとなくでいいよ」
このタイプには「受験の重要性を語る」のではなく、大学というものを具体的にイメージさせる問いが有効です。遠い話を少し近づけてあげることが目的です。
タイプ②「方向感覚なし型」への声かけ
NG声かけ例:
「志望校くらい決めなさい」
「やりたいことがないなら、とりあえず偏差値の高いところを目指しなさい」
OK声かけ例(高1・高2共通):
「今の学校の授業の中で、なんとなくマシだなと思う教科ってある?」
「将来なりたくないもの・やりたくない仕事ってある?逆から考えてみようか」
「大学生活で、勉強以外でやってみたいことってなにかある?」
このタイプは「正解を求めてフリーズしている」状態です。「なんとなく」でいい、「逆から考えていい」という許可を与える問いが突破口になります。
⚠️ 注意
「偏差値が高いからとりあえずここ」という押しつけは、このタイプには特に逆効果です。他者に決められた目標では、苦しい局面で踏ん張るエネルギーが生まれません。時間がかかっても「自分で選んだ感覚」を持たせることが最優先です。
タイプ③「今が楽しい型」への声かけ
NG声かけ例:
「部活ばっかりやってていいの?」
「友達と遊んでばかりで、受験はどうするの?」
OK声かけ例(高1向け):
「部活、楽しそうだね。大学でも続けたいと思ってる?」
「もし今の部活を大学でも続けるとしたら、どんな大学があるんだろうね?」
OK声かけ例(高2向け):
「部活引退後って、どんな生活になると思う?イメージしてみたことある?」
「今の友達と別々の大学になったとして、○○は大学でどんな友達を作りたい?」
このタイプには「今の楽しさを否定しない」ことが絶対条件です。今の好きなものを起点にして、未来につなげる問いかけが有効です。今を楽しんでいるエネルギーを受験に転用するイメージです。
タイプ④「無力感型」への声かけ
NG声かけ例:
「○○くんはもう勉強始めてるってよ」
「このままじゃどこにも受からないよ」
OK声かけ例(高1・高2共通):
「最近学校で、なんとなくわかった瞬間ってあった?どの場面でも小さいことでもいいよ」
「もし受験のことを全部忘れたとして、純粋に知りたいことや面白いと思うことってある?」
「今すぐ決めなくていいし、無理に頑張らなくていい。でも、話してくれると嬉しい」
このタイプに最も必要なのは、「結果を求めない対話の場」です。成果や勉強の話をする前に、子どもが「この人には話せる」と感じられる関係性を育てることが先決です。
「娘が高2のとき、模試の結果が悪くて部屋に閉じこもるようになりました。最初は焦って色々言ってしまったんですが、先生に相談して『1ヶ月、勉強の話をしないで過ごしてみてください』とアドバイスをもらって実践しました。1ヶ月後、娘のほうから『ちょっと相談してもいい?』と声をかけてきて、そこから少しずつ立て直せました。最終的に志望していた関西学院大学に合格できたんですが、あの1ヶ月の沈黙がなければ今はなかったと思います。」
― 元生徒(関西学院大学合格)の保護者より
「焦らせず・追い詰めず・でも動かす」高1・高2特有の難しさと保護者の心構え
高3なら「もう時間がない」という事実がある意味で味方になってくれます。しかし高1・高2では、まだ時間が十分にあるからこそ、子どもに切迫感が生まれにくい。それなのに保護者だけが焦るという状況が生まれやすいのです。
この時期の保護者の役割は、「コーチ」であって「監督」ではありません。コーチは選手の力を引き出す存在。監督は指示を出す存在。大学受験の主役は子ども自身であることを、もう一度確認してください。
ここで一つ大事な視点をお伝えしたいのですが、近年「授業を受けること」そのものは、YouTubeの解説動画やAIの活用によって、ほぼ無料でできる環境になっています。どの予備校の授業が良いかよりも、お子さんが自分で動き出すための「受験意識の点火」と「勉強習慣の形成」をサポートすることに、保護者が関わるエネルギーとコストをかける時代になっています。
もし学習支援にお金をかけるなら、授業を教えてもらうだけの場所よりも、子どもの進捗管理・計画設計・モチベーション維持を伴走してくれる学習コーチング型のサポートこそが、高1・高2のこの時期には特に有効だと私は考えています。
保護者が今週から始められる「3ステップの関わり方」
ステップ1:タイプを見極める「観察週間」を設ける(1週間)
まず何もしないで、ひたすら観察します。「うちの子はどのタイプか?」を見極めることだけに集中する1週間です。勉強の話は一切しなくて構いません。食事のとき、移動中の車の中、ちょっとした会話の中から、子どもの「やる気のなさの正体」をつかみに行きます。
ステップ2:タイプに合わせた「問い」を週1回だけ使う(2〜4週間)
タイプが見えてきたら、上で紹介した声かけの中から1つだけ選んで、週に1回だけ使います。毎日試す必要はありません。頻度より質です。子どもが答えてくれたら「そうなんだ」で終わらせる。正解や続きを求めないことが大切です。
ステップ3:子どもの言葉を「記録する」習慣をつける
子どもがポロッと言った「なんとなく気になること」「面白いと思ったこと」「逆に嫌だと思ったこと」を、スマホのメモにでも残しておきましょう。3ヶ月後に読み返すと、子どもの興味の輪郭が見えてきます。それが進路相談の土台になります。
💡 ポイント
この3ステップはすべて「保護者が変わること」から始まります。子どもを変えようとするのではなく、「問いを投げかけて待てる保護者」に自分がなることが、高1・高2への最も有効なアプローチです。
まとめ:高1・高2のやる気は「与えるもの」ではなく「引き出すもの」
✔ まとめ
・高1・高2の受験意識の薄さは正常反応。ただし放置はNG。今が「種まき」の黄金期。
・やる気が出ない理由は4タイプある。タイプを見極めてからアプローチを選ぶこと。
・コーチング式の声かけは「勉強しなさい」ではなく、子どもが自分で考えるための「問い」を届けること。
・保護者が変わることで、子どもが動き出す。焦らず・追い詰めず・でも関わり続けることが大切。
・受験サポートは「授業を教えてもらうこと」より「子どもの受験意識と習慣を育てること」に投資すると効果的。
「勉強しなさい」と言えば言うほど、子どもは遠ざかる。でも何もしなければ、気づいたときには高3の秋になっている——その間にある「ちょうどいい関わり方」が、コーチング式の声かけです。
高1・高2というこの時期にしか育てられない「受験を自分ごとにする意識」を、ぜひ今日からの会話の中で、少しずつ育ててみてください。
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